2016/07/27 第8回「従業員の持つ価値観」
最近、マーシャルゴールド・スミスが非常に重要な質問をした。「従業員が仕事への情熱でなく、彼ら自身の情熱を見つける手助けを会社がするために投資することに、どんな価値があるか。」
マーシャルの答えは「従業員の私的情熱を見つける手助けには、莫大な価値がある」と言う。
価値観と雇用の間には強い関係がある。雇用の鍵は、会社が定めている価値観ではない。雇用の鍵は、会社で働いている間、従業員は自ら見つけた価値観で暮らすことができることである。
組織で働いている間、彼ら自身の価値観で暮らすことができる人々は高く雇われるが、組織で働いている間、彼ら自身の価値観で暮らすことができない人々は雇われないことがある。(米国での事情)
日本の企業風土は、米国と似ているだろうか。
早稲田大学名誉教授で心理学者・作家の加藤諦三さんは、「低学歴でも幸せな米国人と、高学歴でも不幸せな日本人の格差」で、日本は「アメリカより学歴社会ではない」という事実がある。アメリカでは、物事がうまくいかないときに「どうせ、俺は学歴がないから」といった言い訳はしていない。日本の場合は、社会の価値観などに多様性がないことが問題なのだ。アメリカでは、「学歴があるかないか」という事実が問題ではない。その事実をその人がどう解釈するか、周囲の人がどのように認識するか。これらが問題である。
1970年、80年代、日本企業は従業員の価値観が「終身雇用」にまとまり、「国の経済を一流に押し上げる原動力」となった(ジャパンアズナンバーワン エズラ・F・ヴァーゲル著)。しかし、1997年頃から、「終身雇用」の企業風土が薄らぎ始めた。「定期採用の減少」、「派遣社員制度の活用」などに対応し、従業員の求める価値観が多様化していった。(この頃、有価証券取引の時価会計処理が導入され、多くの企業が資金を集めるために上場し、短期的な利益により価値観が重視された。)
組織の中の人間は、自分の行動を自分の利益のために選択する自律性をもつ一方で、周囲の人々との関係の中で協力的に全体をも考えた行動をする(場の論理とマネジメント 伊丹 敬之)。現在の環境で人々は、協力的な行動を動機づける価値観を個人的に見つけることが出来るだろうか。
日本の経営者は、マーシャルゴールド・スミスが求めた非常に重要な質問を考えることが必要であろう。
山岸 敏彦(やまぎし としひこ)
コンサルタント 顧問(Stakeholder Centered Coaching)
Stakeholder Centered Coachingライセンスを取得し、社長や経営者のコーチング活動をしています。社内外に絶対的な影響を与える経営者の良き相談相手です。
このコラムでは、Stakeholder Centered Coachingについてご紹介してきます。
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