2016/02/05 第19回「誰に事業を承継するか? その選択肢について」
前回のコラムで、事業承継が日本の中小企業の重要な課題になっていることについてお話をしました。今回は事業承継についてさらに見ていきたいと思います。
事業承継を行なおうとする際に、誰に承継するかという点が最初のポイントとなります。選択肢としては、①息子・娘などの親族、②社員、③外部からの有能な人材の3つが考えられますが、実は④第三者(他の会社)へ事業譲渡するという選択肢もあります。
前回も説明したように、①の親族への承継が最も一般的で約45%の割合です。次に社員への承継が約35%、外部から有能な人材を招聘して承継するケースは10%強の割合となっています。④第三者(他の会社)への事業譲渡(株式譲渡)は、10%弱の割合です。少子化が進んだ背景もあり、親族への承継の割合が減りつつあり、社員、外部人材、株式譲渡の割合が増えています。
今回のコラムでは、上記の①~④の承継についてそのメリット、デメリットを見ていきます。
①親族への承継
承継するのにふさわしい親族の後継者がいれば、これに越したことはないと思います。やはり親族ですので、安心して任せられると思いますし、仮に承継後、事業に失敗するようなことがあっても諦めがつくのではないでしょうか。
一方、親族への承継のデメリットとしては、承継するのにふさわしい能力と意欲を持った人材かどうかの判断が甘くなりがちであることが考えられます。また、兄弟がいる場合に、後継社長になれない兄弟が不満を持ち、混乱に繋がるという可能性もありえます。
②社員への承継
親族内に適当な候補者がいない場合には、幹部社員など社員の中から適切な人物を選んで承継してもらうという形となります。長年、会社で働いてもらっている社員ですので、それまでの実績や働き振りを見て、本人の能力・意欲を見極めることができます。ただし、ここで注意しなくてはならないのは、実務担当者としての能力と経営者としての能力は異なるということです。つまり、実務担当者としては優秀であっても、経営者としては不適格ということがあるのです。部下の経営者としての能力を見極める必要があります。
社員に承継するデメリットとしては、株式の取得や個人保証の引継ぎの問題が挙げられます。また、承継後、事業に失敗した場合は、親族へ承継した場合以上に、納得しがたいということもあるかもしれません。
③外部人材への承継
親族にも社内にも、適切な後継者がいない場合は、外部から有能な人材を後継社長候補として採用する方法があります。お金はかかりますが、幹部社員のスカウトを専門とするエグゼクティブ・サーチの会社がありますので、そうした会社を使って優秀な人材を確保するということになります。
外部人材の採用に際しては、自社にとって適した人材かどうかの見極めが重要となります。また、採用してすぐに社長にするのはリスクが高過ぎますので、3年程度は役員として活躍してもらって適正を見極めるというプロセスを踏むことが必要と思われます。
外部人材の場合、有能な人材を確保することは可能ですが、自社との相性というか、適性がとても重要なポイントとなります。会社に溶け込み、社員との良好な人間関係を構築できるか、また創業社長である自分との相性も重要となります。
④第三者への承継
後継者の確保ができない場合でも諦める必要はありません。第三者(他の会社)への事業承継、即ち株式売却による事業譲渡という方法があります。この方法を使った場合、望ましい買収企業が見つかれば、創業社長としては株式の売却益を手に入れることができ、事業の継続・発展を買収企業に託すことができます。
ただし必ず事業譲渡ができる保証はありません。事業自体の魅力がないと買い手が現れない可能性もあります。しかし、今の時代、買収をしたいと考えている企業はとても多いのです。多くの企業が買収の機会を探しているというのが実情です。
この株式譲渡による承継を行なうためには、外部の専門機関の支援が必要となります。我々BIPは、後継者がいない場合の株式譲渡による事業承継も支援しており、実績を持っています。また、後継者がいる場合の事業承継を円滑に進めるお手伝いもできます。お気軽にご相談いただければと思っています。
最後、宣伝になってしまいましたが、来月以降のコラムでは、さらに事業承継を成功させるためのポイントについて説明をしていきたいと思います。
以 上
大塚 直義(おおつか なおよし)
コンサルタント(経営戦略、事業計画、経営管理の仕組み、海外事業、M&A)
経営戦略、事業計画の作り方、経営管理の仕組み等、役立つ情報を事例を交えてご紹介していきます。
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