2015/11/04 第16回「高粗利の事業展開はどのようにしたらできるか?」
前回のコラムで、低成長の成熟経済、人口減少に伴う市場の縮小といった厳しい経営環境の時代においては、従来の薄利多売の発想をあらためて、魅力的な差別化された商品・サービスによる高粗利の確保を狙う事業展開を行なうことが重要との話をしました。
それでは、どうすれば高粗利が実現できるのでしょうか?
2つの方法があると思います。それは、①圧倒的な商品・サービス力、②顧客との緊密性です。
①圧倒的な商品・サービス力
代表的なのはいわゆるブランドです。フェラガモ、グッチ、ルイヴィトンなど高級ブランドの商品は高価格でもそれを買い求める消費者は多いのです。高品質な商品で高級感を訴求し、ブランド力を構築してしまうと、強い差別化された商品として高粗利のビジネスとなります。車ではフェラーリやジャガーなどは高級車の代名詞ともなっており、高い人気を誇っています。
高品質な商品、最先端の商品は、消費者にとって魅力的で、高い価格であっても売れる可能性は高いのです。もちろん、こうした高品質、最先端な商品を生み出さなくてはならないのですが、これは必ずしも大企業にしかできないということではありません。
例えば、気仙沼ニッティングという会社があります。宮城県気仙沼市に震災後、地域の復興に寄与するという目的を持って設立された、手編みのセーターを作っている会社です。40人規模の小さな会社ですが、最高品質の手編みセーターを作る会社として有名になっています。例えば主力商品は15万円と高額ですが、少し前までは抽選販売、今でも順番待ちの状態です。新商品は18万円のさらに高額な価格設定ですが、抽選販売となっています。
この会社では、オリジナルな高品質の毛糸づくりから始めています。手芸糸専門の会社と共同で、世界中から良質な羊毛を選択、羊毛のブレンドを試行錯誤しながら行い、最高品質の糸を創り上げました。その毛糸を使って、中途半端ではない、自信作の「最高にかっこいい」セーター、カーディガンを創り上げたのです。オーダーメイド形式で販売しており、商品は出来上がると社長が自らチェックリストに基づき品質をチェックし、合格したものだけが納品される仕組みです。世の中には本当に良い、一生もののセーターであれば、高くとも買いたいという人は多くいるわけです。
小さな会社であっても、最高品質の商品を創り上げることは可能です。お客様から真に喜ばれる商品を開発することで、高粗利の事業展開は可能となります。
②顧客との緊密性
顧客と緊密な関係を作り上げることも、高粗利の事業を可能とします。
有名な事例として、“電化のヤマグチ”が挙げられます。東京都町田市にある小さな家電販売店です。この会社は1965年創業で地元の電気屋さんと親しまれてきた会社ですが、90年代後半に入ると、ヨドバシ、ヤマダ電機など大手家電量販店の町田市への出店が相次ぎ、それまでの事業のやり方では生き残ることができないということで、事業のあり方を抜本的に変えた会社です。小さな電気店が大きな量販店と競争して生き残るために、この会社がとった戦略とはどんなものだったでしょうか?
それは、徹底した顧客サービスにより“高売り”を可能としたことです。テレビを買ってくれたお客様に対して、自宅に届けて配線、設置するのは当たり前ですが、例えば、切れた電球の取替え作業や、ビデオの予約録画の仕方がわからないお客様の自宅に毎週出向いて翌週の録画をセットしてあげるというサービスなども、上得意のお客様に対して行なっています。それだけでなく、“裏サービス”と呼ぶ、いわゆる「便利屋」がやるようなサービスも行なっているのです。例えば、お客様に頼まれれば、部屋の模様替えやタンスの移動の手伝い、旅行中のペットの餌やり、犬の散歩、庭の水まき等、お客様のために役立つことは何でも行ないます。「遠くの親戚より、近くのヤマグチ」と言われるほど、お客様から頼りにされる存在となっているのです。こうした徹底したサービスにより、量販店より高くても家電製品は全てヤマグチで購入するというお客様づくりをしています。
このヤマグチの事例にように、徹底したサービスで顧客との緊密な関係を作り上げ、高粗利の事業を展開する方法もあります。小さな会社にとっては大変参考になる事業展開の方法であると思います。
薄利多売の発想から脱却し、高付加価値商品・サービスの提供で高粗利の事業を展開することを考えてみては如何でしょうか?
以 上
大塚 直義(おおつか なおよし)
コンサルタント(経営戦略、事業計画、経営管理の仕組み、海外事業、M&A)
経営戦略、事業計画の作り方、経営管理の仕組み等、役立つ情報を事例を交えてご紹介していきます。
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