2015/09/09 第31回「商品企画シリーズ⑩(石黒啓司) ■商品のライフサイクル理論(その1) 導入期」
お盆を過ぎた後、ずっと涼しい日が続き、皆さんも早い秋を堪能されていることと思います。
前回は、SONY、Panasonic(旧松下)の競争を比較、更にAppleの出現を加味した成長戦略・提案型商品・市場創造の3面で分析、『どのフィールドで闘うか…』をご説明しました。
ちょっと理想論に走り過ぎた反省もあって今回から『商品のライフサイクル理論』を元に『具体的な闘い方に掘り下げたシリーズ』でお送りします。
今までも何度かお話した『商品のライフサイクル理論』ですが、端的に言えば現在の商品をどう有効活用して最後まで生き残るか…または何時どのように撤退するか…に尽きます。
ここで改めて『商品のライフサイクル理論』を眺めて見ましょう。
一見難しそうなチャートですが、成長~衰退の時期に応じて、商品やマーケティングをどう進めるか…と言う原理であり、商品企画の王道の理論です。
従って単純明快に、分かりやすい例が沢山含まれている便利なツールなのです。
ここでは大別して、導入期、成長期、成熟期・競争期、衰退期の4つに分かれています。
業界カテゴリーによって、この4つのサイクルには多少違いがあります。
例えばTV、冷蔵庫、洗濯機、掃除機などホワイトグッズ(白物家電)の例では、衰退期の発想はなく、成熟期・競争期が延々と持続する中で各社が闘っています。
しかしこの市場でも挑戦や変革は常に起きていて、ダイソン提案のサイクロン掃除機や羽根のない扇風機、アイリスオーヤマの健闘はご承知の通りです。
反面、ブラウングッズと呼ばれるAudio/Videoなど趣味家電と呼ばれる分野では常に変化が繰り返され、正に 導入・競争・成熟・衰退~代替え商品への切替が見受けられます。
これはフォーマット競争と言う、白物家電には無い大きな違いが背景にあるのも一因だと思われます。
皆さんも容易に頭に浮かぶと思いますが、SPレコードからLP、そしてCD、MDなど音楽ディスクだけでもこの数十年で大きな変化を遂げています。 オープンリール、カセット8トラック、DAT、DCCなどテープの世界も然り、またホームビデオではBeta、VHS競争。
そしてカメラでは銀鉛フィルムに始まり8mmフィルム、8mmビデオ、デジカメ、更にスマホの高性能化で代替え…など一番変化が激しい業界と言えるでしょう。
企業はこれらの中で『競争戦略』で悩み『成長戦略』で突破口を切り開くのに日夜努力をしている訳です。
これで『商品のライフサイクル理論』の重要さに改めてお気づきのことと思います。
商品企画の本質とは『来年発売する商品をどうするか…』などといきなり商品を論ずるのではなく、大きな流れの中での戦略、最適化が大切なのです。
今回はその1として『導入期の特質と対応』を下記に整理しましたので、キーワードをサクッとご覧ください。
また小難しい内容になってしまいましたが、導入期が一番難しく、困難な時期なのでご容赦願います。
導入期で重要なのは『商品』であることは言うまでもありません。
しかし、商品は業界に依って多様なので、ここでは商品コンセプト、ベネフィット、先進性を形に表すデザインの重要性、そしてあまり機能を豊富にすることより基本性能すなわち基本ベネフィットに集中する点に留めて置きます。
次に重要なのは…『カスタマターゲット』と『オピニオンリーダー』と『Ad/Pro』など=宣伝広告やパブリシティ活動です。
IT時代でこの辺の理論は大きく変化しており、従来のセオリーを捨てた新発想が必要です。
広告代理店、費用対効果、媒体、キャラクターなど『新挑戦』をキーワードとして大いに暴れまくる覚悟がポイントになります。
経営面ではやはりR&Dリソース、水平統合か垂直統合かが大きな判断となります。
新しいフォーマット導入の場合には立場がライセンサーかライセンシーかに依って異なりますが、前者の場合は特に業界全体で立ち上げる哲学を持ち、業界を支援する姿勢が肝になります。
折角、『理論ではなく、具体的な闘い方に掘り下げたシリーズ』で分かりやすくを目指したはずなのですが、この導入期…難しくなってしまいました。 改めてお詫び致します。
次回は成長期、競争期なので、一般論でご説明できるかと思います。
石黒 啓司(いしぐろ けいじ)
コンサルタント(商品企画、マーケティング、仕事力改革)
今の日本、政治・経済の停滞の中、特に企業の元気がありません。構造変化への対応、新しい挑戦の欠如が原因と痛感しています。 これらの打開には先ず、戦略力、創造力・統率力などの仕事力が必須。至近な実例を元に仕事力&元気玉の復活を目指して発信します。
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