2015/05/12 第29回「商品企画シリーズ⑧(石黒啓司) ■商品企画の本質とは?・・・どのフィールドで闘うか」
今回のテーマは、商品企画で重要な、闘うフィールドについて考えてみます。
とかく目の前にある日常のビジネスが当然続くものと考え勝ちであり、現存するそれら(顧客、販路、商品)を前提とした商品企画を継続するのが現実的には有り勝ちです。
来年もしくは2,3年のビジネスを考えるのであればそれで問題はありません。
但し、変化の厳しい昨今の市場環境では『中期的な視野の戦略』すなわち『将来を見た闘うフィールド』をどう捉えるかが重要になってきます。
闘うフィールドには、色々な要素があります。
自社の得意な既存分野、自社の技術が活かせる新規分野、競争戦略を取るのか成長戦略を取るのか、商品のライフサイクルの時期に依っても闘うフィールドは変化します。
それらの中からどのフィールドを選択するかに依って、将来が大きく変わって来ます。
銀座に足袋の老舗である大野屋があります。
足袋の需要、またそれに携わる店は減少の一途を辿っている中で、それでも足袋に専念し続けて暖簾を守り、生き残るのは並大抵の苦労ではなかったことと思いますが、大野屋はまだまだまだ現存しています。
これはひとつの商品(フィールド)に特化し継続することに集中した経営の典型でありひとつの戦略と言えましょう。
但し、現代の企業社会でこれが通用するかどうか…残念ながら変化の激しい環境下ではノーと言わざるを得ません。
市場の変化、商品の進化の中で、どんな顧客をターゲットにどんな商品で生き残るのか常に進化したベネフィットをどう提供するかを考え続けるのが商品戦略であり、選択と集中で挑戦を続けることが必要です。
これは昨今の日本の製造業を見ても言える事であり、アベノミクスや株価の上昇で浮かれていますが、将来のビジネスのネタとなる開発への挑戦、底力となる新たな商品開発の点で、新しい闘うフィールドの創造が出来ていると言えるでしょうか?
このままでは、将来の成長戦略の欠如が大きな懸念となってしまいます。
ここで下記のチャートをご覧ください。
かつてSONY対 松下 と言われた時代(左側)と アップル社を比較した資料です。
賢い皆さんは、チャートのキーワードを見て、すぐに理解されたと思います。
かつてのSONYは人のやらないことをやる挑戦心でモルモットと称されていました。
それに対して松下はすぐに真似をする『マネシタ』と揶揄されながらも両社はお互い切磋琢磨して市場を創造し、日本の家電業界だけでなく世界をリードするフィールドを創造していました。
しかし、これも過去の話であり、現在はアップル社がそれに代わっていると言えます。
アップル社とSONYの比較論はこのコラムでは到底、語り切れませんが、私の言う『闘うフィールドをどう創造するのか… 』の重要性を理解して頂く材料として掲げた次第です。
常に、顧客のニーズとベネフィットを創造し、積極的な開発を進め、先発ブランドとして創業者利益を確保する…これが闘うフィールド論の根幹なのです。
今回は理想論に走ってしまって恐縮ですが、今後も具体的な実例を基に商品企画の本質を分かり易くお伝えしたいと考えています。
次回はこの闘うフィールドを発展させた『自社商品の存在位置と分析』の予定です。
石黒 啓司(いしぐろ けいじ)
コンサルタント(商品企画、マーケティング、仕事力改革)
今の日本、政治・経済の停滞の中、特に企業の元気がありません。構造変化への対応、新しい挑戦の欠如が原因と痛感しています。 これらの打開には先ず、戦略力、創造力・統率力などの仕事力が必須。至近な実例を元に仕事力&元気玉の復活を目指して発信します。
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