2015/04/01 第9回「経営計画は誰がつくる?」
今まで8回にわたり、経営計画の意義やつくり方について説明をしてきました。今回は、経営計画は誰がつくるべきなのか、或いは経営計画づくりにおける社長の役割について話をしたいと思います。
当たり前の話ですが、会社経営に関する最終責任を負うのは社長です。特にオーナー会社の場合は、経営が行き詰って倒産し、社長が全てを失ってしまうことすらあるのです。「一生懸命」という言葉がありますが、これは「一所懸命」から来ています。中世の武士が自分の生活のよりどころとなる領地を命がけで守ったことがその言葉の由来となっています。これを現在のオーナー社長に置き換えると、「一社懸命」です。企業経営はまさに「命懸け」なのです。
会社の方向性を示す経営計画は企業経営にとってとても重要なものです。その重要な経営計画づくりを社長が人任せにすることは許されません。社長がイニシアティブを持って、主体的に経営計画を策定する必要があります。経営責任を負わなくてはならない社長が経営の方向性を自ら定めていくことは当然なのです。
小さな会社の場合は、社長が経営計画書を一人でつくるということもあるでしょう。ただ、経営計画を作るプロセスにおいて、留意して頂きたいポイントがあります。それは、経営幹部の経営計画づくりへの「参画」です。社長一人で経営計画書を完成させて後に、「経営幹部・社員はこの計画書通りに実行せよ。」というやり方もあるかもしれませんが、それでは経営幹部はモチベーション高く働くことができるでしょうか? 経営幹部として成長していけるでしょうか? 受動的な幹部になってしまわないでしょうか?
経営計画作りに経営幹部を巻き込むことは重要なポイントです。戦略を一緒に考える、或いは相談するというプロセスを踏むようにしてください。こうして経営計画づくりに「参画」することで、幹部は計画に対して意欲的取り組めるようになりますし、また会社の経営、未来創りに関しての意識も高まります。人間は押し付けられるのが嫌いです。計画書を押し付けられたと感じたら、その計画の実行は義務感となってしまいがちです。
経営幹部の参画だけではありません。経営戦略をベースに実行計画のブレークダウンを行なっていくプロセスにおいては、社員を参画させていくことが必要です。例えば3ヵ年の中期経営計画の1年目は年間予算となっていきます。この予算編成においては現場を巻き込むことが重要です。この予算編成と連動する目標管理ではまさに社員一人ひとりが、経営戦略と連動する目標設定をしていくことになります。
以上見てきたように経営幹部や社員を計画作りに参画させることは、その計画を実行し、実現していくために重要なポイントとなります。しかし、経営幹部達を参画させる意味はそれだけではありません。経営戦略は社長が主体となってつくっていかなくてはならないのですが、一人だけでつくるのは難しさがあります。人間は自分の頭だけで考えようとしても、思考が狭くなってしまうということがあります。「三人寄れば文殊の知恵」という言葉があるように、一人だけで考えていても良いアイデアが浮かばないが、他の人の意見を聞きながら一緒に考えると良いアイデアが見つかるということがよくあります。また、全ての情報を社長が持っているというわけでもありません。良い経営戦略を立案するためには、関係者を巻き込んで一緒に戦略を考え、計画作りを進めていくことが重要となってきます。
また、経営戦略をつくるためには、事業の外部環境・内部環境を分析する作業が欠かせないという説明を以前しました。実際に経営計画書をつくりあげるには多くの作業を伴います。計画作りの一連の作業を全て社長が行なうのは難しいという側面もあります。その意味でも、経営幹部、特に後継社長候補の役員に計画作りの作業をしてもらうことは、その幹部の育成にも繋がります。また、経営計画作りのプロである経営コンサルタントに入ってもらって、一緒に計画作りを進めることは、適切な戦略をつくるためにも、幹部社員を育成するためにも効果的です。
しかし、繰り返しになりますが、会社経営に「一社懸命」な社長が、経営計画作りを他人に任せたり、或いは経営幹部の主張に妥協して安易な経営計画をつくるということがあってはならないのです。以前お話したように、経営計画書は社長の夢を叶えるためのものでもあります。あくまでも社長が主体的に会社の将来の方向性を考え、リーダーシップを持って、経営計画書を策定し、それを実行していく。そして会社の未来を創っていくことになります。
以 上
大塚 直義(おおつか なおよし)
コンサルタント(経営戦略、事業計画、経営管理の仕組み、海外事業、M&A)
経営戦略、事業計画の作り方、経営管理の仕組み等、役立つ情報を事例を交えてご紹介していきます。
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