2015/03/02 第8回「戦略を創る仕組みを持っていますか?」
前回コラムで事業実態や事業環境に関する情報を収集する仕組みの重要性について説明をしました。経営に関する情報を集め、それをベースとして、分析し、戦略をつくっていくことが必要です。情報がない中では正しい経営判断をしていくことも、正しい戦略をつくっていくこともできません。
これは企業経営に限ったことではありませんが、「情報」と「考える」という2つの要素があいまって初めて成果を出すための方向性が見えてくるのだと思います。「情報」をもとに分析し、「考える」ことで、企業の戦略が創られていきます。今回のコラムでは情報をもとに戦略を「考える」ということを見ていきたいと思います。
情報をもとに戦略を「考える」あるいは、創造するためには、いくつかの要素が必要となります。まずは情報を「分析する」必要があります。経営情報を分析するためには、収益性分析、安定性分析、生産性分析、成長性分析などの数々の財務分析手法を始めとして、売上高などのABC分析や、事業の外部環境・内部環境を分析するPEST分析、VRIO分析、バリューチェーン分析、3C分析、5フォース分析、SWOT分析など多くの様々な分析手法があります。これらの分析のツールや手法を上手に使って情報を分析し、経営課題を抽出することができます。
次に分析された情報をもとに戦略を創っていく過程において、例えばアンゾフの成長ベクトル、PPM(プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント)、ポジショニング・マップ、ビジネスモデル・キャンバスなどの様々な戦略構築ためのフレームワークやツールを活用することが有効となります。
そして実際に戦略を策定するためには、ポーターの基本戦略、コトラーの競争地位別戦略、ランチェスター戦略、STPや4Pなどのマーケティング戦略など、多様な戦略理論を応用していくことが必要となってきます。
無から有は生まれないのです。情報をもとに“考えて”戦略を創っていくわけですが、その戦略を「考える」過程においては、様々なツールや理論を駆使しながら戦略を創っていく必要性があります。その意味では、情報を収集する仕組みだけでなく、戦略を策定するツールやプロセスの仕組みを持つことが、企業経営にとって重要と言えます。
さらに付け加えるならば、「経営戦略を考える視点」も重要です。以前のコラムで、「経営計画書は夢を実現するためのツール」という話をしました。経営者は、自分の会社をどのような会社にしたいのか、事業を通して何を実現したいのかなどの思いや夢を経営計画書の中で明らかにしていくことの重要性について触れました。戦略は単に経営上の問題点・課題点を解決するためのものではありません。遠い夢の実現に向けて、目標としての中期的経営ビジョンを描き、そのビジョンを達成するための戦略を策定することが大切です。
過去からの延長で安易に目標としての経営ビジョンを決めるのではなく、未来の夢から逆算して経営ビジョンを描くのです。会社を大きく発展させていきたいのなら、「何年で今の売上高を2倍にできるのか?」、「2倍にするためには、何をどうしないといけないのか?」という発想が大切になってきます。売上を2倍にするためには、既存の事業を既存の市場で展開しているだけでは不可能かもしれません。新市場の開拓や新規事業の開発が必要となるかもしれません。過去からの延長で考えるのではなく、未来を見据えて、抜本的な事業構造の変革も視野に入れた考え方が会社を発展させていくためには不可欠となるのです。
戦略を考えるためには、「情報収集の仕組み」、「戦略策定の仕組み」、そして「経営の長期的視点」が必要なのです。
以 上
大塚 直義(おおつか なおよし)
コンサルタント(経営戦略、事業計画、経営管理の仕組み、海外事業、M&A)
経営戦略、事業計画の作り方、経営管理の仕組み等、役立つ情報を事例を交えてご紹介していきます。
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