2015/02/03 第7回「事業実態や事業環境に関する情報収集・分析の仕組みを持っていますか?」
前回コラムの“経営計画書は夢を実現するためのツール”という話の中で、経営計画書の中で夢を描き、目標を明らかにすることの重要性を説明しました。しかし、夢や目標を書いただけでは、それを実現させていくことはできません。目標をどうやって達成していくのか、その道筋や方法を考える必要があります。言葉を変えれば、目標達成のための戦略の策定が必要となります。
事業は競合他社と競争しながら顧客創造していくものです。競合他社に打ち勝って、顧客から商品・サービスを購入してもらうためには、戦略が必要となります。しかし、計画数値は書いてあっても、その数値を実現するための戦略がない経営計画書を作られている会社が多いようです。戦略なくして競争に勝つことはできません。夢や目標を達成することもできないのです。
適切な戦略を立案するためには、まず事業の実態がどうなっているのか、また、市場動向や競合他社の動向がどうなっているのか、そうした事業環境に関する情報を収集、分析して目標達成するための問題点や課題点を抽出する必要があります。このプロセスがとても重要となります。
しかし多くの会社でこのプロセスがしっかりと行なわれないために、適切な戦略が立てられていないのが実情です。実はこの情報の収集・分析は仕組みがないと戦略も立てられないのです。仕組みがないために、社長が自社の事業活動の実態すらも把握できていないというケースが少なくありません。皆さんの会社では、事業の進捗をどのように把握していますか?事業の問題点をどうのように探っていますか?顧客ニーズ、市場、競合他社の動向はどうですか?
事業にとって重要な情報が社長のもとに集まってくる仕組みを作ることが、経営を正しく行なう必要条件になります。情報がない中では、正しい経営判断はできませんし、適切な戦略を考えることもできないのです。どうしたら情報が集まり、分析ができるか、その方法、仕組みを考えてみてください。
考えるヒントとして、以下にいくつかのポイントを列挙してみたいと思います。
■ 風通しの良い、情報が流れる企業風土となっているか?
■ 事業の進捗を的確に把握できる会議体の仕組みを持っているか?
■ 会議体以外での事業の進捗や事業活動に関する情報を収集する仕組みは?
■ 実績だけではなく、今月の見込み、今期の見込みをタイムリーに捉えているか?
■ 売上未達の真因を突き止められているか?
■ 顧客の声(顧客ニーズ、顧客動向)や競合他社の動向を把握する仕組みを持っているか?
■ マクロ的な市場動向、業界動向を把握する仕組みを持っているか?
■ 売上高のABC分析等により、事業の構造やその問題点を把握できているか?
■ 売上高だけでなく、粗利や貢献利益の分析がなされているか?
■ 財務分析により、利益構造の問題点が明らかになっているか?
■ 財務体質の問題点・課題点をつかめているか?
■ 在庫など棚卸資産の水準は適正か?(資金は無駄に寝ていないか?)
■ 資金回収は問題なく、行なわれているか?
■ カネの動き、例えば、毎月の税引後利益とキャッシュの関係性が把握できているか?
■ 売上高利益率だけでなく、資金収益率などの資金効率の観点から事業を見ているか?
■ 設備投資などの投資を行なう際の判断基準を持っているか?
■ 不採算事業の撤退などに関する判断基準を持っているか?
以上、いくつかのポイントを並べてみました。上記のポイントは経営を行なっていくうえで、とても重要な要素です。こうした情報が社長のもとに集まる仕組みをつくることが必要です。そして、そうした仕組みをつくることは決して難しいことではないのです。是非、事業実態や事業環境に関する情報をタイムリーに収集し、分析できる仕組みをつくっていってください。情報がない中で会社を経営することはできません。
以 上
大塚 直義(おおつか なおよし)
コンサルタント(経営戦略、事業計画、経営管理の仕組み、海外事業、M&A)
経営戦略、事業計画の作り方、経営管理の仕組み等、役立つ情報を事例を交えてご紹介していきます。
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