2014/07/01 第24回「商品企画 シリーズ③ (石黒啓司) ■商品企画の本質とは?・・・企画が思考すべき範囲」
前回、商品企画は、正に経営戦略であり、将来を照らすサーチライトになれ…と明言しました。
今回はその役割を実行する時の『商品企画が思考すべき範囲』について考えてみます。
得てして、単に新商品を造り上げることが商品企画だと思いがちですが、それ以前に企業の置かれた立場、強みと弱み、将来の展望などを常に思考しなければ商品企画はは成り立ちません。
思考すべき範囲とは…もう聡明な皆さんは直感されたと思いますが、かなり広範囲に亘っての思考力が要求されます。
前回のサーチライトの役目を発展させ、どの範囲までスポットを当てて思考すべきかを次のチャートにまとめてみました。 先ずは、全体像、キーワードを眺めてみて下さい。
このチャートは私が経験した企業の概念ですが、個々の商品を企画する前に、ここまでの範囲を思考した実例です。
先ず、市場を分析し、どの方向に企業として活路を見出して商品展開するか…。
変化の激しい時代、5年で売上構成比の半分近くが変動することもあり得ます。
アップル社などが良い例であり、 iPod、iPhone 、iPad…と大きく変化しており、数年先には 更に新しいカテゴリーの創出が必至とされ、期待されています。
これは決して大袈裟ではなく、どの企業でも、規模に拘わらず言えることです。
次に商品企画に必須なのは経営感覚です。
経営面を知らずして商品を生みだすのは無謀であり、リスクを伴います。
自社の経営数値、開発投資の課題やROIを分析し、自社開発力の強み弱みを頭に入れて担当する商品の損益分岐点も常に頭に置くことがビジネスの根本です。
ここでは先々の展開を睨んだ『成長戦略』を取るのか、当面の米の飯を稼ぐ既存商品での『競争戦略』を取るのか、そのバランス感覚も重要な要素となります。
これら様々な要素をクリアしながら、やっと商品そのものの企画に入る訳です。
商品自体を造り出すのは楽しいクリエイティブな仕事ですが、ここでも様々な試練が待ち構えています。 自社設計・生産が得策か、既存商品はOEM・ODMなどアウトソーシング体制にし、新規に成長を狙う挑戦商品のみを自社で設計・生産するなど、体制面の工夫が必要だし、国内・海外どちらの市場に重きを置いて商品創りをするか、販売面でも販路(大手量販店または専門店、代理店)を考え、マージン体系と価格設定、そして綿密な販売計画で在庫を減らす努力など、商品企画の範囲は無限大と言えます。
ここで、閑話休題…
今回、取り上げた『企画の思考すべき範囲』は企業の規模、組織、などに依って状況が違う…とのご指摘もあるかと思います。
他の部門を差し置いて余計なことを考えるより、与えられた商品カテゴリーの中で商品力を上げるのが企画の本来の役目、と考える道も確かにあるでしょう。
しかし、高度成長以降の失われた20年…これが日本経済に及ぼした停滞は何故、起きたのか、私は様々な角度で分析してみました。
これは私見ですが、目先の成功例、商品展開に溺れ、限られた市場のパイを奪い合うだけで、競争戦略から成長戦略に脱却出来なかった視野と志の低さが一因と考えます。
また不景気の状況下、自分のポジションを守り、リストラを恐れる余り、積極的な挑戦心を忘れた『平目スタンスの役員から部課長クラス』、そして『バブル世代や、ゆとり教育世代のチャレンジ精神不足』にあったことは確かです。
今回、私は敢えて『商品企画の思考すべき範囲は広範囲である』との持論を皆さんに提言します。 これは私自身の経験に基づくものです。
私自身、慣れない経営数字面を勉強し、製造工場、販売マーケティングの現場を知ることから始め、商品発表・宣伝広告・販売促進策・量販店への商品導入まで一貫して納得行くまで商品企画の立場で実践した結果、大きな成果を得ることが出来ました。
『どこまでが自己の責任と考えるか…』これが本日のキーワードです。
最後に、オヤジの説教風で恐縮ですが、下記のチャートでお開きとさせて頂きます。
石黒 啓司(いしぐろ けいじ)
コンサルタント(商品企画、マーケティング、仕事力改革)
今の日本、政治・経済の停滞の中、特に企業の元気がありません。構造変化への対応、新しい挑戦の欠如が原因と痛感しています。 これらの打開には先ず、戦略力、創造力・統率力などの仕事力が必須。至近な実例を元に仕事力&元気玉の復活を目指して発信します。
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