2013/11/01 第20回「経営戦略 シリーズ⑥(石黒啓司)■悩まず、考えて動く スピード経営 (実例)社内で争い、市場で負けたパターン」
経営戦略シリーズも、第 6回目を迎えました。
前回に引き続き、スピード経営の在り方について、実例を元に紹介します。
前回も触れましたが 悩むこと と 考えること には大きな違いがあります。
先ずはこれに気付くことが大切です。
■悩むこと・・・・・これは、ジレンマ、辻褄合せなどで迷路に陥ることを指します。
■考える事・・・・ ここでは目標達成の本質を見極め、諸問題を解決する最善の施策を前向きに進めることを指します。
得てして、この悩みと考える事を混同している場合が多いように見受けられます。
諸問題は社内にあることが実は多いのです。
その社内のジレンマ解決にエネルギーを使い、目標に向けた本質を見失うとスピード経営どころか落とし穴に陥ってしまいます。
今回の実例は、あるグループ企業が所有するソフト事業とハード事業の間に存在する著作権問題で両者が対立し、悩み、スピード経営が出来なかったケースです。
すなわち、社内で争い、市場で負けてしまったパターンです。
S社では グループ企業として、Audio / Video機器=ハードウエア事業と、音楽・映像=ソフトウエア事業を両輪とする、グローバルな経営戦略を展開していました。
これは時代とともに変化するメディアの変遷( LPレコードからCDなど)を技術面で支え、高画質・高音質のソフトウエアを楽しめる環境を提供すると言う、崇高な戦略に基づいた経営方針であり、上手く回れば、素晴らしい究極の発想とも言えるものでした。
ところが、このふたつの業界には大きな文化の違いがあり、乗り越えるには容易でない苦労も存在がありました。
まず最大の文化の違いとして著作権問題が存在しています。
ソフト業界から見ると、映像・音楽を気軽に複写できるハードウエアが許せない存在です。
またハードウエア業界から見れば顧客に高音質・高画質の録音・録画が手軽に出来る商品を提供したい・・・。
ここに大きな溝があり、それをソフト・ハードの両輪として同一のグループ企業として経営するには前述の 『悩みとジレンマ』 が存在していました。
ここでひとつのチャートを掲示します。
携帯Audioと、音楽配信ビジネスの展開に関して、S社とA社( IT / PC系企業)を比較したものです。
A社はパソコンを中心とする IT / PC 系企業であり、音楽や映像などの ソフトウエア事業(Contents や著作権) を保有していません。 また、パソコン産業が発祥した当時に良く言われた、『 何でもありの自由な発想・挑戦マインド 』 の企業です。
この2社の展開にどんな差が付いたのか・・・
チャート上の説明①~④を、両社比較しながら読めば大筋がつかめると思います。
チャートをご覧になって大筋はご理解されたと思います。
すなわち、A社はハードとソフトの 『 社内のジレンマが全くない 』 ので自由奔放に顧客の望む商品(ハード)、音楽配信(ソフト)をスピード経営で展開出来た訳です。
ところがS社はソフト・ハード両事業をグループ内に持ったが為に、著作権問題で社内論争を重ねるうちにスピーディな経営判断が遅れたのが最大の原因だと言えるでしょう。
スピード経営の落とし穴 = 社内で争って、市場で負ける・・・
似たような要素が、あなたの会社の中にもありませんか?
社内でのあらゆる競争にも良い面と悪い面がありますが、典型的な実例・・・として社内で争うことのナンセンスさ・・・これが今回の教訓です。
石黒 啓司(いしぐろ けいじ)
コンサルタント(商品企画、マーケティング、仕事力改革)
今の日本、政治・経済の停滞の中、特に企業の元気がありません。構造変化への対応、新しい挑戦の欠如が原因と痛感しています。 これらの打開には先ず、戦略力、創造力・統率力などの仕事力が必須。至近な実例を元に仕事力&元気玉の復活を目指して発信します。
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