2017/01/05 第30回「持続的な成長を実現する企業経営とは?」
皆さん、現代の厳しい事業環境の中で自社の事業を持続的に成長させていくためには一体どうしたらよいでしょうか?
会社を持続的に成長させていくためには、いくつかのポイントがあるかと思います。
一つは、事業の強化に向けた弛まぬ努力です。新商品の開発など商品やサービスの競争力を強化していく。営業力を強化して、既存顧客への深耕を図っていく。さらには既存顧客だけではなく、新規顧客の開拓を進めていく。こうした地道な事業の強化、事業拡大のための努力が必要であることは言うまでもありません。
しかし、人口減少を背景に市場の縮小が進んでいる業界も多い中で、事業のビジネスモデル自体が時代に適合しなくなっている企業も多いのではないでしょうか?
従来の延長線上で既存事業を続けていくというのではなく、一度立ち止まって、抜本的に自社のビジネスモデルの見直しを行ってみることも大切です。
もしビジネスモデルに問題があるのであれば、ビジネスモデルの改善に早急に取組む必要があります。
ビジネスモデルに問題がない場合でも、この厳しい事業環境の中では、将来長年にわたって会社が成長を続けるためには、既存事業だけでは難しいと言えます。既存事業の強化・拡大と平行して、新規事業開発を進めていくべきです。
私は総合電機の東芝で働いていましたので、多くの事業が、導入、成長、成熟、衰退のプロダクトライフサイクルの過程を経て終焉したのを見てきました。私が東芝に入社した1981年当時、東芝は世界一のブラウン管製造メーカーでした。しかし、ブラウン管は液晶にとって変わられました。また、パソコンが家庭に普及する前は、ワープロが広く使われていましたが、カナ漢字変換技術で他社をリードしていた東芝は、家庭用ワープロのルポという製品で高い市場シェアを押さえました。しかし、パソコンの普及とともにワープロも使われなくなりました。世界に先駆けてラップトップパソコン、ノートブックパソコンを開発した東芝は世界のパソコン市場で圧倒的市場シェアを握っていた時代がありましたが、今やパソコン自体が、商品的にコモディティ化してしまい、スマホやタブレットに押されています。
既存事業だけにしがみついていたのでは、企業の持続的成長は望めません。既存事業から利益が上がっているうちに、新規事業開発への取り組みを進めることが重要です。
私が注目している新事業への取り組み事例の一つが、パーク24のカーシェアリングの新規事業です。
パーク24は、タイムズの名称で駐車場事業を展開しています。同社の決算発表記事によると、駐車場数を1年間に700箇所増やして16,800箇所にするなど、既存事業である駐車場事業の拡販に務めています。その一方で、新規事業としてのカーシェアリング事業の立ち上げ・規模拡大を図り、拠点数を1年間で1,200箇所増やして8,000箇所として、競合他社(1,000箇所)との差を広げています。
同社はファミリーマートやサークルKサンクスなどコンビニと提携してその駐車場を活用するアライアンス戦略も進めています。また、個人の利用だけでなく、企業の営業マンの利用といった法人需要も取り込みながら、カーシェアリング事業を伸ばし、業界最大手の地位を固めようとしています。
若者の車離れは、駐車場事業にとって、将来、市場を縮小させる要因ともなりえます。若者の車離れを脅威として捉えるだけでなく、機会としてとらえ、カーシェアリングという新規事業を開始したのは、時代の変化に適応するための鋭い経営判断と言えましょう。しかも、新規事業の場合、既存事業とのシナジー効果や自社の強みが活かせるかがポイントとなりますが、パーク24の場合は、自社が持つ駐車場をカーシェアリングの拠点として活用しています。長期的な企業成長を目指して、戦略的に事業展開を進めています。
既存事業の強化・拡大だけでなく、新規事業開発も平行して進めていくことが、企業の持続的な成長に欠かせません。長期的視点に立って、会社の明るい未来を創っていくことが経営者の仕事です。
以 上
大塚 直義(おおつか なおよし)
コンサルタント(経営戦略、事業計画、経営管理の仕組み、海外事業、M&A)
経営戦略、事業計画の作り方、経営管理の仕組み等、役立つ情報を事例を交えてご紹介していきます。
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