2016/11/01 第28回「戦略立案の進め方について」
前回は、戦略の立案を行なうために、外部環境、内部環境に関する情報の収集とその分析が重要となるというお話をしました。今回は、環境分析の結果を踏まえて戦略立案を行なう際の重要なポイントについて考えてみたいと思います。
環境分析のフレームワークとしては、3C分析、5フォース分析、SWOT分析など便利で有効なツールが幾つかあります。分析結果を踏まえて戦略立案を行なおうとした時のフレームワークとしては、クロスSWOTのフレームワークを思い浮かべる方が多いのではないかと思います。クロスSWOTとは、SWOTの強み、弱み、機会、脅威をそれぞれ掛算(強み×機会、強み×脅威、弱み×機会、弱み×脅威)して戦略の選択肢を考えていくフレームワークです。
このクロスSWOTは色々な戦略の選択肢を考えてみるという点では良いのですが、このフレームワークを基軸に戦略立案を進めるのは無理があります。なぜならば、4つの掛算から出てくる戦略の選択肢は、それぞれバラバラで拡散的です。これらを戦略として統合することはできません。また、クロスSWOTでは重要な要素が見落とされてしまう可能性があります。
私は環境分析から抽出された経営課題、KFS、強みの3つを基軸にして戦略を構築していくことが的を射た戦略の立案に繋がると考えています。
ここで、KFSという言葉が出てきましたので、説明します。KFSとは、Key Factor for Success、或いはKey for Successの略で、日本語では「成功の鍵」と訳されます。ビジネスにはそのビジネスを成功させるための鍵と言うか、肝があります。例えば、医薬品ビジネスであれば研究開発が肝でしょうし、化粧品ビジネスであれば、研究開発と並んで宣伝広告も肝でしょう。このようにビジネスごとに成功の鍵があり、それをKFSと呼んでいます。
従って戦略立案に際しては、KFSを強く意識した戦略を策定することが大切です。
強みとは自社の強みのことです。戦略立案では、如何に自社の強みを活かすかという視点が重要です。
私は自身の戦略立案の経験から、KFSと自社の強みを強く意識しながら経営課題を解決すべく戦略を考えるという方法が、ストレートで効果的だと感じています。シンプルですがこれが戦略を立案する際の重要な考え方だと思います。
フレームワークという意味では、戦略立案に際して、事業展開マトリクス(アンゾフの成長ベクトル)、PPM、ポジションマップなども役に立ちます。
事業展開マトリクスは市場(顧客)と商品(事業)をそれぞれ既存と新規に分けて4象限のマトリクスの中でどのような方向で事業拡大を図っていくべきかを考えるフレームワークです。前回のコラムでも触れましたが、戦略立案を行なうにあたり、大所高所の視点で考えていくことが大切です。しかし、ややもすると既存商品を既存市場に売ることだけに視野を限定して戦略立案を行なってしまいがちです。そうではなくて、既存商品の新規市場への展開、新規商品での既存市場の掘り起こし、新規商品での新規市場への展開(多角化)といった選択肢も検討してから、事業拡大の方向性を決めていくことが必要です。
PPM(プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント)は4象限のボストンコンサルティング型と9象限のマッキンゼー型の2種類があります。どちらを使っても良いのでしょうが、私はマッキンゼー型の方が使いやすいのでそちらを昔から使っています。自社の事業や商品の構成を中長期的にどうしていくかを検討する際にはこのPPMが効果を発揮します。
マーケティングのポジションマップは、自社の商品の差別化を図っていくには、やはり便利なツールです。最近のペルソナ・マーケティングの手法も“刺さるマーケティング戦略”を構築する上では効果的です。
これらのフレームワークや手法は戦略立案に役に立ちますが、前述した通り、経営課題、KFS、強みを強く意識しながら、戦略を考えていくことがポイントとなります。
以 上
大塚 直義(おおつか なおよし)
コンサルタント(経営戦略、事業計画、経営管理の仕組み、海外事業、M&A)
経営戦略、事業計画の作り方、経営管理の仕組み等、役立つ情報を事例を交えてご紹介していきます。
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